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対談集 銀幕の大スタアたちの微笑対談集 銀幕の大スタアたちの微笑
(2010/04/23)
白井 佳夫

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山田宏一(映画評論家)
試写会などで見た映画ではなく、映画の本です。映画ファン必読の快著と言いたいくらいおもしろい。
「対談集 銀幕の大スタアたちの微笑」(日之出出版)はかつて「キネマ旬報」の名編集長だった白井佳夫氏の、じつにじつに興味のつきない映画インタビュー集です。岸惠子、若尾文子、香川京子、八千草薫、吉永小百合という5人の女優(みな「男はつらいよ」の寅さんのマドンナになった女優です)と池部良、高倉健、勝新太郎という3人の男優との対談集で、勝新太郎の対談だけでも、まるで一本の映画を見るような大爆笑、大興奮。おまけに和田誠(本の装丁者でもある)との対談も最初と最後に「語り下ろし」で付されており、さながら白井佳夫映画週間とでも言いたいような趣きです。吉永小百合との対談では、「伊豆の踊子」(西河克巳監督、1963)をめぐって、

白井 『伊豆の踊子』もよかったです。西河克巳監督で、シナリオは誰でしたか?
吉永 三木克己さんって、あの井出俊郎さんのペンネームですね。日活では、表立って書くことができなかったんで。あの頃は五社協定とか、いろいろあって。


といったような、知る人ぞ知る、思いがけない話も出てくる。井出俊郎はたぶん当時東宝と契約していた若手の脚本家で、のちに森谷司郎監督の『兄貴の恋人』(1968)、『二人の恋人』(1969)という青春映画の傑作のシナリオを書いて押しも押されもせぬ名シナリオライターになるのですが、そのころはまだ他社の仕事もひきうけて稼がなければならないくらいの状態だったのだろうということがわかります。
池部良との対談では、谷口千吉監督、池部良、山口淑子主演の名作「暁の脱走」(1950)について──

白井 最後に小沢栄太郎の将校が機関銃を撃って、ふたりが殺されるシーンは、どこで撮ったんですか?
池部 東京都の大島。いまは様子が変わってますけど、当時は、三原山の内輪山と外輪山とがドーナッツみたいにはっきり分かれていたんです。その上のほうに楼門をつくって、そこから小沢副官が機関銃でダ、ダ、ダと撃つんです。そこで、われわれふたり(山口淑子と池部良)の手がふれ合うんだか合わないんだかわからないうちに風が吹いて、砂塵がバーッと舞って、エンドマーク。
白井 ちょっと日本映画抜けのした、イメージでしたね。
池部 『暁の脱走』の話をし出したら、キリがない。


その「キリがない」話のつづきを、私は山根貞男氏と共同で西本正キャメラマンにインタビューをして聞いたことがあります(「香港への道 中川信夫からブルース・リーへ」、筑摩書房)。西本正は、「暁の脱走」のとき、三村明キャメラマンの助手で、やはり谷口千吉監督の助手(助監督)だった岡本喜八と意気投合して、「暁の脱走」のラストシーンをこんなふうに撮り上げたとのことです。

──『暁の脱走』は池部良と山口淑子の主演で、1950年の作品ですね。ラストシーンがすばらしく印象的でした。脱走した恋人たちが機関銃で撃たれて倒れ、手と手を握り合おうとして握り合えずに砂漠のなかで死んでいく。
西本 あのラストシーンは僕がキャメラを回しているんです。というのも、あのとき、大島でロケーションをやって、雨が降っちゃって、ラストシーンを撮り残したんですよ。それで三村明さんは「千ちゃん(谷口千吉監督)と相談するから、君が残りを回して撮ってきてくれ」ということだったんです。
──ふたりが手と手を握り合おうとするところに砂嵐がかぶさるというロマンチックなシーン。
西本 砂がガラガラーッと崩れていくところです。太陽に手をこうやって。あれ、僕の撮影なんです。
──そうでしたか。〔ジョゼフ・フォン・スタンバーグ監督、マレーネ・ディートリッヒ、ゲーリー・クーパー主演の〕アメリカ映画『モロッコ』(1930)のラストのイメージをちょっと想わせるような、いいシーンでした。もしかしたら、西本さんが少年時代に〔中国の〕大連で見られた『モロッコ』の記憶が生きているのでは……?
西本 生きています。あれ、やっぱり、小さいときに見た映画のイメージが残っているんでしょうね。『暁の脱走』の助監督は岡本喜八さんですよ。喜八さん、セカンド〔チーフに次ぐ二番目の助監督〕のときです。喜八さんは大島に残ったわけです。谷口千吉監督にたのまれて。それで、ラストシーンを一緒に何カットか撮って、あくる日に上げようとしたら、雨がジャンジャン降りだしたんですよ。製作主任が「西本さんよ、この雨じゃ、もう帰ろう。残ったって無駄だよ、また来たらいいんだよ」なんて言ってね。でも、喜八さんと僕はね、「せっかくのチャンスをもらったんだ」と。このまま帰ったら、みすみすチャンスを捨てるようなもんだと。
──すると、『暁の脱走』のラストシーンは岡本喜八監督、西本正撮影になったわけですね。
西本 そうなんです。


といったエピソードも思いだして、白井佳夫対談集をおもしろく、たのしく、興奮しながら読んでいます。
白井佳夫氏にしかできない対談集です。次回はぜひ「銀幕の大監督たちの微笑」を期待したいところです。
夜の人々 [DVD]夜の人々 [DVD]
(2010/04/26)
キャシー・オドネル

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山田宏一(映画評論家)
映画館で見たのはずっと前のことで、ぜひもう一度見たいと思っていた作品です。ニコラス・レイ監督の第一回監督作品「夜の人々」(1948)がジュネス企画からDVDで発売になりました。ヌーヴェル・ヴァーグの、とくにフランソワ・トリュフォー監督が偏愛し、いわばその映画的原点になった名作です。といっても、完璧な傑作とは言えないかもしれません。フランソワ・トリュフォーはよく「ニコラス・レイのように傷つきやすく」という表現を使ったものですが、たしかに、「夜の人々」ほど痛々しい青春映画はめったにないように思われます。繊細で傷つきやすく、などというありきたりの表現も、主役のファーリー・グレンジャーとキャシー・オドンネルのよわよわしくあやうい青春カップルを見れば、文句なしに納得できるでしょう。もう見ていられないくらい、はかなく美しい。

「俺たちに明日はない」(アーサー・ペン監督、1967)と同じボニーとクライドの実話を映画化したギャング映画ですが、「拳銃魔」(ジョゼフ・H・ルイス監督、1949)のように女(ペギー・カミンズ)のほうが男(ジョン・ドール)をひっぱっていくわけでなく、その前に映画化された「暗黒街の弾痕」(フリッツ・ラング監督、1937)のカップル(ヘンリー・フォンダとシルヴィア・シドニー)よりも、その後にリメイクされた『ボウイ&キーチ』(ロバート・アルトマン監督、1974)のカップル(キース・キャラダインとシェリー・デュヴァル)よりも、そしてもちろん『俺たちに明日はない』のカップル(ウォーレン・ビーティとフェイ・ダナウェイ)よりも、ずっと一途で感動的で、みじかくも美しく燃えた青春の花火のような一瞬を描いた佳作──珠玉の小品とも言いたいくらいです。

RKOという、そのころはB級の、マイナーのハリウッド映画の撮影所で、低予算による早撮りの映画づくりのため、技術的なミスが目立つ「できそこないの作品」であり、「それゆえに演出の才能がきらめく」とフランソワ・トリュフォーやジャン=リュック・ゴダールが心をこめて絶讃した若々しく新鮮な魅力もたっぷり味わえます。「あの犬はどうなったのだろう」「あの宝石店の店主はどうなったのだろう」などということなどにおかまいなく、映画は息せききったスピーディーなリズムで若いふたりの恋の逃走を追いかけます。そして、そのあまりにもあっけなく、せつない末路も。
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知られざる現代日本映画
    ~劇場アニメーション映画2010(1月-4月)~

文・増當竜也(映画文筆)


このところ、
アニメーションの劇場用映画を進んで追いかけるようにしています。

そこで毎度痛感させられるのは、
それぞれの作品がいかに趣向を凝らしつつ、
映画として面白いものを追求しているかということです。

小規模のファン向け公開的な作品が多いのは事実ですが
だからと言ってそれらがすべてイチゲンさんに対して閉ざされているわけではなく
むしろ今の実写にはない可能性をいろいろ発見できることを
少しでも知っていただきたく、
とりとめのないままに
今年の1月から4月までに公開された作品の短評を書いてしまいました。

もう公開が終わっているものも多数ありますが
DVDリリースの折の参考にでもしていただけたら幸いです。


【増當竜也】
1964年2月11日、鹿児島県出身。ノベライズに「狐怪談」「君に捧げる初恋」「4400 第3シーズン」(以上、竹書房)、取材本に「十五人の黒澤明」(ぴあ)。


秘密結社鷹の爪 THE MOVIE3~http://鷹の爪.jpは永遠に~
http://鷹の爪.jp/ 2010/1/16公開
監督:FROGMAN
 悪の秘密結社が繰り広げるオバカ騒動の数々をゆる~く描いたフラッシュアニメの劇場版第3弾。動きの乏しいフラッシュアニメは一見劇場用に適していないように思われがちですが(私もそう思っていました)、これが意外にも大スクリーンに映えるのには驚きで、次から次へと繰り出されるアホで奇抜なギャグのアイデアが秀逸であることと、またそれに見合った絵柄との融合にも秘訣があるのでしょう。その意味では劇場での鑑賞とDVDでの鑑賞とでは、かなり印象が変わることと思われます。今回はさらにクライマックスで山崎貴監督が参加してのCG映像が登場といった新趣向もあり、その贅沢さもまた似合わないがゆえに大いに笑えます。あ、主題歌は何とスーザン・ボイルでした。


劇場版Fate/Stay night-UNLIMITED BLADE WORKS
http://www.fatestaynight.jp/ 2010/1/23公開
監督:山口祐司
 魔術師同士が争う聖杯戦争に巻き込まれた青年の運命を描いたダーク・バトル・ファンタジー。原作はアドベンチャー・ゲーム(AGV)ですが、この劇場版はゲームを1回クリアすると現れる新たなシナリオ(ヒロインのひとり凛の視点からドラマを見据えたもの)の映画化であり、メイン・ストーリーそのものは数年前にTVアニメ・シリーズでもおよそ半年かけて描かれていて、今回はいわば視点を変えて同じスト―リーを100分で描き切るという、慌ただしいことこの上ない作品となっています。当然、原作ゲームもしくはTVシリーズを見てない人には非常に筋がわかりづらく、またファンとしてもダイジェストの感は免れないわけですが、そうしたリスクを承知で膨大なストーリーを一気に描出しながら疾走する映像そのものの力強さは他の追従を許さないほどで、アクション主体の繋ぎも功を奏して、いつしか壮大なサイキック・バトルに巻き込まれ、体感させられていることに気づかされます。この潔さこそが本作のキモともいえましょう。


魔法少女リリカルなのはThe MOVIE 1st
http://www.nanoha.com/ 2010/1/23公開
監督:草川啓造 
 人気TVアニメ・シリーズの第1シーズンを第2&3シーズンの草川啓造監督が劇場用にリメイクした魔法少女もので、再編集作品ではなく完全な劇場用新作(劇場版『エースをねらえ!』みたいなものですね)。正と負、二人の魔法少女の出会いと確執、そして友情の芽生えを描いたものですが、いわゆる魔女っ子ものとタカを括っていると火傷しかねないほどに、繊細で傷つきやすい子供たちの痛々しい心情が見事に捉えられています。上映時間も何と130分という長尺で、冒頭部こそ若干もたつく感がありますが、二人の少女が出会ってからの展開はいささかも飽きさせることなく、これで作画的なパンチがあればと思いつつ、それでもこのジャンルでこの奥深い内容ということで大いに脱帽。アニメーションで語られるドラマの可能性をさらに推し進めた秀作として讃えたい作品です。


10thアニバーサリー劇場版 遊☆戯☆王~超融合!時空を越えた絆~
http://www.yugioh10th.com/ 2010/1/23公開
監督:竹下健一
 カード・バトル・ゲームの一大ブームを築き上げた人気TVアニメ・シリーズの10周年を記念して作られた劇場版。未来世界の崩壊を阻止すべく、歴代のシリーズ主人公たちが時空を越えて現代(?)に集結して歴史の流れを変えようという、いわば『ターミネーター』的なお話には新味こそありませんが、実はそれ以上に今回は3D映画という趣向がお楽しみであり、2Dのアニメ画がここでは気持ちよく立体化。髪の毛とオデコの間の微妙な空間まで構築されていたり、またロングの画でも主人公たちが装備するアイテムをほんわか浮き上がらせて強調したりといったこだわりは、3Dならではの演出効果だと唸らされました。


涼宮ハルヒの消失
http://www.kyotoanimation.co.jp/haruhi/movie/ 2010/2/6公開
総監督:石原立也
 作品のみならず歌に踊りにと、今や世界中に一大ブームを巻き起こしているライトノヴェル原作の人気TVアニメーションの劇場版。というか、第2シーズンまで作られたTVシリーズの続きでもある原作エピソードを映画化したものです。
 これは基本設定だけ押さえておけば、イチゲンさんでも十分楽しめます。傍若無人な美少女ヒロイン涼宮ハルヒは自分の想像することが全て具現化してしまう特殊能力の持ち主なのですが、本人はそのことを全く気づいておらず、彼女が良からぬことを想像することを防ぐため(例えば、彼女が「こんな世界滅んでしまえ」と思ったら、本当に世界は滅びてしまうのです)、宇宙人が作ったアンドロイド少女・長門と、未来人の純情セクシー先輩と、超能力者のイケメン男が彼女を監視し続けています(というか、彼らにしても実はハルヒが望んだがために登場してきたキャラなのですが)。そして彼等は、ハルヒが実は唯一心を許しているごくごく普通の凡人“きょん”こそが、その成否を握る重要な存在とみなしており、そのためきょんはハルヒが団長を務める謎の団体“SOS団”に無理やり入らされ、毎回不可思議な騒動に巻き込まれていくのです。
 そして映画は12月のある日、突然きょんがハルヒの存在しない世界へ迷いこんでしまうことから始まります。ハルヒがいないということは、つまりはごくごく普通の、当たり前の日常世界であり、アンドロイドの少女・長門もこの世界では普通の人間としてきょんに接してきます。もしや、今までのことはすべて夢で、この世界こそ本来の自分がいるべき場所なのではないか? しかし、やはり何か違和感が残る? では、一体どうやって真相を突き止めればいいのか? こうしてドラマはミステリアスなSFパラドックス・ドラマとして進行していきます。
 即ち今回、ヒロインの涼宮ハルヒはほとんど登場しません(ただし、全く出ないわけでもありません。それは映画を見ればわかります)。代わってアンドロイド少女・長門が本作のヒロイン的存在となります。ではなぜ彼女が? それ以上言うとネタバラシになってしまうのですが、そのことで本作は珠玉の青春ファンタジーとして繊細な情緒を巧みに醸し出し、ドラマが進むに従って切ない感動を増幅させていきます。
 と同時に、ついに全ての真相を知らされた主人公のきょんが、その後どのような行動をとるのか? そこには国の内外を問わずおとなしく収まりがちな昨今の青春映画群とは一線も二線も画し、進んで危険に立ち向かっていこうとする若くアナーキーな冒険心、ひいては自分の運命を自分で切り開いていこうという、これまた若さと青さならではの潔い決意の念が粋な感動として顕れていきます(しかもそのために、彼はマジに危険な目に遭う!)。そしてついには、今やリアルな青春の息吹を伝えるに最も適した映像メディアは、アニメーションなのではないか? という結論に達するしかないほどのカタルシスが待ち受けているのでした。
 上映時間はおよそ2時間40分。これはおそらく国内の商業アニメーション映画としては『宇宙戦艦ヤマト完結編』70ミリ版(170分)に次ぐほどの長尺かと思われますが、アバター』の上映時間2時間45分と同じくらい、いやそれ以上の快活なテンポと、繊細さをいささかも損なうことのない演出、スキのない作画、世界観を知り尽くした声優陣の演技などなどによって、極上の仕上がりとなっています。SFとして、青春ものとして、萌えとして、ミステリとして、アニメーションとして、そして何よりも“映画”として真に優れた傑作中の傑作。これを見ずに日本のアニメーションは云々…などと語ってほしくない、アニメーション映画史上のみならず映画史上に残るべき作品。従来のアニメに対する偏見を捨てて、ぜひ見ていただきたい。ジブリだけがアニメ映画ではありません。


やさいのようせい N.Y.SALAD The Movie 3D
http://yasainoyousei.jp/ 2010/2/13公開
監督:豊島啓介
 深夜になるとキッチンで動き出す野菜たちの可愛い生態を描いた天野喜孝・原作のTVアニメ・シリーズの劇場版。原田知世のナレーションが気持よく画面にフィットしています。とはいえ全体で45分ほどの尺の中、3分の2はTVシリーズの短編エピソード群を流用したもので、劇場オリジナルのエピソードは10分強。その部分が3Dというのが売りでもあるわけですが、丁寧な“飛び出す絵本”といったテイストは好もしくもあり、物足りなくもあり。しかしそれ以上に、たったこれだけで入場料金1300円というのはさすがに……(これなら1時間弱の上映時間で1200円均一だった『侍戦隊シンケンジャーVSゴーオンジャー銀幕BANG!!』のほうが、はるかにお得感がありました。シンケンイエローに扮したアイドリング!!!11号こと森田涼花ちゃんのお江戸町娘姿も見られるし)。


機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)episode1 ユニコーンの日
http://www.gundam-unicorn.net/ 2010/2/20公開
監督:古橋一浩
 本来は劇場用映画ではなく、オリジナルBD&DVDとして製作された新たなガンダム・サーガの第1部(およそ50分)ですが、劇場で数週間にわたり特別上映されたので記しておきます。ストーリーは福井晴敏で、物語はファースト・ガンダム最終編『逆襲のシャア』から数年後の世界、例によってまた新たな宇宙戦争の幕が切って落とされるわけですが、今回はガンダム版『ローマの休日』といったテイストで、ヒロインの王女の名前もオードリー。彼女と工業専門学生の主人公バナージの出会いと戦争の勃発が、そもそもモニター鑑賞用に作られているのに、大スクリーンに映写しても何ら遜色のない秀逸かつ美麗な作画とテンポ感抜群な演出によって描かれていきます。そしてガンダム・サーガ毎回のキモともいえる、主人公はいかにしてガンダムに乗り込むのか? というポイントも見事に通過し、序盤戦として次回への期待感を大いに募らせる仕上がり。ファースト・ガンダム世代を久々に唸らせる快作になること必至でしょう。


超劇場版ケロロ軍曹 誕生!究極ケロロ 奇跡の時空島 であります!!
http://www.keroro-movie.net/ 2010/2/27公開
総監督:佐藤順一
 ご存じ『ケロロ軍曹』劇場版シリーズの第5作。今回はケロロと冬樹がイースター島へ冒険の旅に赴くといった趣向ですが、従来のものよりぐーんと肩の力を抜いた作りで、それによって良くも悪くもTVスペシャル的な印象を与えています。とかくTVアニメの劇場版は“映画”ということを過剰に意識してガチガチになることが多いのですが、その意味で今回はTVシリーズ独自の軽いナンセンス・ギャグなどが快活に挿入されており、ケロロ小隊の面々が生気を吸われて栗頭になるあたりも大爆笑。しかし、それでいて結局は後半の展開が地球侵略云々といった、いつもの劇場版の流れに陥ってしまうのは興醒め。そもそも今回はメインの人間キャラが冬樹だけというのがどうにも寂しく、そのあたりも悪い意味でのTVスペシャル的印象を与えてしまっているのかもしれません。クライマックスのタイムパラドックスの用い方など実に上手く、大いに唸らせるものがあっただけに、何とも勿体ない出来。次回は地球侵略から少し離れたチャブ台感覚を貫きながら、オバカをやってもらいたいものです。


映画ドラえもん のび太の人魚大海戦
http://doraeiga.com/2010/ 2010/3/6公開
監督:楠葉宏三
 劇場版ドラえもん30作。最近の声優陣の入れ替えもかなり慣れてきて、個人的にはかなり好印象(ただ、ドラ役の水田わさびって、叫びながら秘密道具の名を言うときとか、少し滑舌がよくないのが難)。いつものようにドラえもんがのび太のために街中を架空の海に仕立てたことから、遥か昔に宇宙からやってきたという人魚族の王女様と出会い、いつものようにみんなで海底へと冒険の旅へ…といった展開そのものにさほど新味は感じないのですが、さすがに長寿シリーズの貫録で見る側を飽きさせない趣向に怠りなく、また数々のSFアイテムもなるほどねと唸らされます。マニアにはお楽しみ、しずかちゃんの入浴シーン(実はこのシリーズ、かなりヲタク対策ができている。二次元青少年性描写をめぐる東京都条例でも、この入浴シーンはOKという決定を下したそうですが、お役人って相変わらず何も分かってないですね)もどことなくフェチっぽく、しかしそれよりも何よりも、やはり最初の街中を海にするという夢膨らませるアイデアこそ、本シリーズならではの良さでしょう。


東のエデン劇場版Ⅱ
http://juiz.jp/ 2010/3/13公開
監督:神山健治
 人気TVポリティカル・アニメ・シリーズのその後を描いた劇場版2部作の後編。100億円の予算を駆使してこの国を救えという使命を与えられた人々の確執と、その中の一人で日本をミサイル攻撃から救った滝沢朗と、彼を慕うヒロイン咲の淡い恋模様が併行して描かれていきますが、複雑に入り組んだ設定などもあって、さすがにこれはTVシリーズを見てないイチゲンさんには解読の難しい作品でしょう。ただし映画としてはシリーズ完結編ということで、ずっと見続けてきたファンにはカタルシスを与えるものにはなっています。(キネマ旬報4月上旬号に拙評が掲載されていますので、よろしければご参照のほどを)


イヴの時間 劇場版
http://timeofeve.com/ 2010/3/6公開
監督:吉浦康裕
 アンドロイドが人間に奉仕する立場として社会に入り込むようになった未来、主人公の少年リクオは親友マサキとともに、ふとしたことから地下の喫茶店“イヴの時間”に迷い込みます。そこは人間とアンドロイドを区別しない店であり、一見感情などないかのように思われていたアンドロイドたちも、その店の中では喜怒哀楽を露にすることに二人は驚きつつ、次第にそれを受け入れるようになっていきますが……という、WEBで発表されたアニメーション全6話を劇場用に新作シーンの追加&再編集した才人・吉浦康裕監督作品。かつて手塚治虫が生み出した人間とロボットの関係性から成る人種差別問題を、21世紀の今さらにリアルに発展解釈させた世界観と、現代若手映像クリエイターならではの繊細かつ静謐なタッチが見事に融合。しかも喫茶店を舞台にしたSF群像ドラマとは、何と洒落ているのでしょう(しかも、これだけハイ・クオリティの作品がWEBで見られてしまう今の時代って、一体……!)。また最近巷をにぎわす過剰な環境保護団体へのアンチテーゼのごとき反ロボット団体の魔手といった要素も実にリアルな構築がなされています。なお今回はファースト・シーズンで、ドラマそのものは今後も続く予定ですが、これ1本だけでも十分に堪能できる出来栄えで、その上で次回への期待を大いに募らせてくれる秀作です。


映画プリキュア オールスターズDX2 希望の光 レインボージュエルを守れ!
http://www.precure-allstars.com/ 2010/3/20公開
監督:大塚隆史
 女の子たちに大人気のプリキュア・シリーズの中で、歴代ヒロインを総登場させる劇場版DXシリーズの第2弾で、希望の光たる“レインボージュエル”を盗んで世界を闇に変えようとする悪漢と総勢17人のヒロインとの戦いが描かれるわけですが、彼女たちの華麗でおしゃれな変身ポーズ・ショットをひとりひとり律儀に大スクリーンで展開させており、もはや全体の3分の1は変身シーンなのではないかと思わせるくらい(実際はそうでもないですけど)、可愛いキャラたちが次々とポーズをとりまくっていきます。しかし、この決めポーズこそは時代劇や歌舞伎から採った日本古来伝統文化のアニメーション的再現であり(かつての東映動画スタッフの多くは、東映京都撮影所の助監督などを経ています)、またヒロイン大集合の図式は『忠臣蔵』や『次郎長富士』など東映オールスター時代劇をも連想させる、いわば娯楽映画の王道。今や東映の実写映画から失われて久しい同社の伝統が、実は子供向けアニメーションの中にこそ受け継がれていることに感動を覚えるのです(実写ではスーパー戦隊シリーズがそれを受け継いでいますね)。キネマ旬報4月下旬号の野村正昭さんの批評にもある、観客を『素晴らしき日曜日』のように映画に参加させようとする手法も、純粋に反応してくれる子供たちだからこそ有効なのでしょう(最近では今年の劇場版『ケロロ』の同時上映だった短編『超電影版SDガンダム三国伝』でも、画面内のキャラが観客に応援を呼びかける演出がなされていました。アニメーションは黒澤映画の実験性すらも優に取りこんで久しいのです)。


名探偵コナン 天空の難破船(ロスト・シップ)
http://www.conan-movie.jp/ 2010/4/17公開
監督:山本泰一郎
 コナンたちの乗った気球内にテロリストが奪った細菌兵器が…という『カサンドラ・クロス』と『ヒンデンブルグ』を足して2で割ったような作品になるか? と期待した70年代世代の想いなどものの見事に裏切られ、結末的にはドッチラケとしか言いようのない、どうにもこうにもすっきりしない仕上がり。コナンと怪盗キッドとヒロイン蘭の三角関係といったシリーズのファンには興味しんしんな部分も今一つこちら側には弾んで届かず、この大ヒット劇場版シリーズの中ではさほどよろしからぬ出来栄えになりました。


映画クレヨンしんちゃん 超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁
http://www.shinchan-movie.com/ 2010/4/17公開 
監督:しぎのあきら
 劇場版シリーズ18作目。未来のしんちゃんを救うため、その恋人が現代に現れてしんちゃんを未来に連れていくことから始まるお話ですが、何だかまたタイムスリップものか…といった気持も無きにしも非ず(なぜ映画版のしんちゃんは、こうしたSFテイストになることが異様に多いのでしょうか?)。また映画版でのしんちゃんは妙にヒロイックに描かれることが多く、そこに閉口することが多々あるのですが(映画版『ドラえもん』のジャイアン状態ですね)、今回はそのパターンが一段と強まった感もあり、特にクライマックスは悲痛なほど。個人的好みとしてはもっとTVシリーズのおばかぶりを強調した卓袱台感覚の作品を見たいなあと。実際、本作で一番面白いのは未来世界で老いた父ちゃん母ちゃんが登場するくだりで、またしんちゃんともども未来へ来てしまった幼稚園のお友達連中の悲喜こもごもも大いに笑えるだけに、なおさらそう思ってしまいます。ただ演出的に、しんちゃんたちが花嫁(希望)軍団から逃走するくだりの画面処理など実に映画的で上手いなあと唸らされるところもいくつかあったのも事実で、最後の原作者への哀悼テロップも、やはりぐっとくるものはありました。


劇場版銀魂 新訳紅桜篇
http://wwws.warnerbros.co.jp/gintama/ 2010/4/24公開
監督:高松信司 
 週刊少年ジャンプ連載の人気コミックを原作にしたTVアニメ・シリーズの劇場版。アメリカの代わりに宇宙人がやってきて開国した異世界の江戸幕末時代、近代科学と江戸情緒が交錯し、攘夷戦争(ここでの攘夷の対象は宇宙人です)が勃発するなどの世界観で、よろず屋を営む坂田銀時とその仲間たちの活躍を描いた抱腹絶倒ギャグと鋭角なアクションがつるべうちのエンタテインメントで、今回の劇場版はTVシリーズでも描かれた人気エピソードを劇場用に“新訳”したもので、妖刀“紅桜”を手にした岡田似蔵(岡田以蔵ではありません)の狂気や、それに伴う攘夷派・高杉晋介(高杉晋作ではありません)の暗躍などが、TVシリーズ以上のハイテンション演出にて繰り広げられていきますが、やはり要所要所に仕掛けられたギャグのタネがことごとく上手くドラマに機能して独特のテンポを生むとともに、その世界観をより一層楽しく彩っています。また冒頭とラストに配されたオマケ映像。これはもう見てくれとしかいいようがない、まさに抱腹絶倒の優れもの、しかも映画ファンであればあるほど大笑いできるものだとだけ記しておきます。一度見終わると、そのまま帰らずに続いてもう一回見たくなる快作です(映画館が昔のように入れ替え制じゃない時代だったら…)。ちなみに現在オンエア中の本作の予告もすごいですね。「絶賛上映中!」「客が入ってなくても、とりあえずはそういうんだよな」なんて、この作品だからこそ許される業界の真実的吐露(!?)でしょう(でも現に本作は大ヒットしちゃいましたけどね)。


劇場版TRIGUN(トライガン)―Badlands Rumble―
監督:西村聡
(シネマグランプリ有料ページにて掲載
http://cgrandprix.blog42.fc2.com/blog-entry-395.html

いばらの王 King of Thorn
監督:片山一良
(シネマグランプリ有料ページにて掲載。
http://cgrandprix.blog42.fc2.com/blog-entry-394.html
またキネマ旬報5月下旬号にもレビューを掲載しています)


【管理人から】
キネマ旬報の2010年5月下旬号に「いばらの王-King of Thorn」公開記念としてサンライズ代表取締役社長・内田健ニ氏のインタビューが掲載されています。聞き手は増當竜也氏。「映画」マスコミが一部の作品を除き、劇場用アニメーションに日本映画として着目しない現状を嘆く増當氏に、内田氏は、宮崎作品やガンダムで育った年代が、アニメーションに対する心の柵、垣根を越えて来ているのではないかという期待と、ならばこちらも評価の対象となる作品を作っていけるという抱負を語っています。

アニメーションの専門家ではなく、映画文筆として、洋邦問わず、あらゆる年代・ジャンルの映画を見て、南田洋子の最後のロングインタビューなど幾多の映画人と仕事をしてきた(同じキネマ旬報5月下旬号には、井筒和幸監督の巻頭ロングインタビューも掲載)増當竜也氏ならばこその問題提起だと思います。まずは「涼宮ハルヒの消失」と「いばらの王 King of Thorn」を見なければ。

ちなみにキネマ旬報の年間ベスト・テン日本映画55人の選考委員の一人である増當氏の2009年の10本を記しておきます。

1 交響詩曲エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい
2 劇場版 天元突破グレンラガン 螺巌篇
3 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破
4 劔岳 点の記
5 大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE
6 愛のむきだし
7 ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~
8 ハルフウェイ
9 携帯彼氏
10 超劇場版ケロロ軍曹 撃侵ドラゴンウォリアーズであります!
プロフィール

れがあるF

Author:れがあるF
 新作映画の公開に先立ち、映画会社は宣伝のため、「試写室」と呼ばれる映写施設で上映会を行なう。
 これは「試写室」に出入りすることを許された、映画を見るプロたちが推薦する最新作をランキング形式で発表する企画。 すなわち、真の必見作がここにある!

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