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対談集 銀幕の大スタアたちの微笑対談集 銀幕の大スタアたちの微笑
(2010/04/23)
白井 佳夫

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山田宏一(映画評論家)
試写会などで見た映画ではなく、映画の本です。映画ファン必読の快著と言いたいくらいおもしろい。
「対談集 銀幕の大スタアたちの微笑」(日之出出版)はかつて「キネマ旬報」の名編集長だった白井佳夫氏の、じつにじつに興味のつきない映画インタビュー集です。岸惠子、若尾文子、香川京子、八千草薫、吉永小百合という5人の女優(みな「男はつらいよ」の寅さんのマドンナになった女優です)と池部良、高倉健、勝新太郎という3人の男優との対談集で、勝新太郎の対談だけでも、まるで一本の映画を見るような大爆笑、大興奮。おまけに和田誠(本の装丁者でもある)との対談も最初と最後に「語り下ろし」で付されており、さながら白井佳夫映画週間とでも言いたいような趣きです。吉永小百合との対談では、「伊豆の踊子」(西河克巳監督、1963)をめぐって、

白井 『伊豆の踊子』もよかったです。西河克巳監督で、シナリオは誰でしたか?
吉永 三木克己さんって、あの井出俊郎さんのペンネームですね。日活では、表立って書くことができなかったんで。あの頃は五社協定とか、いろいろあって。


といったような、知る人ぞ知る、思いがけない話も出てくる。井出俊郎はたぶん当時東宝と契約していた若手の脚本家で、のちに森谷司郎監督の『兄貴の恋人』(1968)、『二人の恋人』(1969)という青春映画の傑作のシナリオを書いて押しも押されもせぬ名シナリオライターになるのですが、そのころはまだ他社の仕事もひきうけて稼がなければならないくらいの状態だったのだろうということがわかります。
池部良との対談では、谷口千吉監督、池部良、山口淑子主演の名作「暁の脱走」(1950)について──

白井 最後に小沢栄太郎の将校が機関銃を撃って、ふたりが殺されるシーンは、どこで撮ったんですか?
池部 東京都の大島。いまは様子が変わってますけど、当時は、三原山の内輪山と外輪山とがドーナッツみたいにはっきり分かれていたんです。その上のほうに楼門をつくって、そこから小沢副官が機関銃でダ、ダ、ダと撃つんです。そこで、われわれふたり(山口淑子と池部良)の手がふれ合うんだか合わないんだかわからないうちに風が吹いて、砂塵がバーッと舞って、エンドマーク。
白井 ちょっと日本映画抜けのした、イメージでしたね。
池部 『暁の脱走』の話をし出したら、キリがない。


その「キリがない」話のつづきを、私は山根貞男氏と共同で西本正キャメラマンにインタビューをして聞いたことがあります(「香港への道 中川信夫からブルース・リーへ」、筑摩書房)。西本正は、「暁の脱走」のとき、三村明キャメラマンの助手で、やはり谷口千吉監督の助手(助監督)だった岡本喜八と意気投合して、「暁の脱走」のラストシーンをこんなふうに撮り上げたとのことです。

──『暁の脱走』は池部良と山口淑子の主演で、1950年の作品ですね。ラストシーンがすばらしく印象的でした。脱走した恋人たちが機関銃で撃たれて倒れ、手と手を握り合おうとして握り合えずに砂漠のなかで死んでいく。
西本 あのラストシーンは僕がキャメラを回しているんです。というのも、あのとき、大島でロケーションをやって、雨が降っちゃって、ラストシーンを撮り残したんですよ。それで三村明さんは「千ちゃん(谷口千吉監督)と相談するから、君が残りを回して撮ってきてくれ」ということだったんです。
──ふたりが手と手を握り合おうとするところに砂嵐がかぶさるというロマンチックなシーン。
西本 砂がガラガラーッと崩れていくところです。太陽に手をこうやって。あれ、僕の撮影なんです。
──そうでしたか。〔ジョゼフ・フォン・スタンバーグ監督、マレーネ・ディートリッヒ、ゲーリー・クーパー主演の〕アメリカ映画『モロッコ』(1930)のラストのイメージをちょっと想わせるような、いいシーンでした。もしかしたら、西本さんが少年時代に〔中国の〕大連で見られた『モロッコ』の記憶が生きているのでは……?
西本 生きています。あれ、やっぱり、小さいときに見た映画のイメージが残っているんでしょうね。『暁の脱走』の助監督は岡本喜八さんですよ。喜八さん、セカンド〔チーフに次ぐ二番目の助監督〕のときです。喜八さんは大島に残ったわけです。谷口千吉監督にたのまれて。それで、ラストシーンを一緒に何カットか撮って、あくる日に上げようとしたら、雨がジャンジャン降りだしたんですよ。製作主任が「西本さんよ、この雨じゃ、もう帰ろう。残ったって無駄だよ、また来たらいいんだよ」なんて言ってね。でも、喜八さんと僕はね、「せっかくのチャンスをもらったんだ」と。このまま帰ったら、みすみすチャンスを捨てるようなもんだと。
──すると、『暁の脱走』のラストシーンは岡本喜八監督、西本正撮影になったわけですね。
西本 そうなんです。


といったエピソードも思いだして、白井佳夫対談集をおもしろく、たのしく、興奮しながら読んでいます。
白井佳夫氏にしかできない対談集です。次回はぜひ「銀幕の大監督たちの微笑」を期待したいところです。
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夜の人々 [DVD]夜の人々 [DVD]
(2010/04/26)
キャシー・オドネル

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山田宏一(映画評論家)
映画館で見たのはずっと前のことで、ぜひもう一度見たいと思っていた作品です。ニコラス・レイ監督の第一回監督作品「夜の人々」(1948)がジュネス企画からDVDで発売になりました。ヌーヴェル・ヴァーグの、とくにフランソワ・トリュフォー監督が偏愛し、いわばその映画的原点になった名作です。といっても、完璧な傑作とは言えないかもしれません。フランソワ・トリュフォーはよく「ニコラス・レイのように傷つきやすく」という表現を使ったものですが、たしかに、「夜の人々」ほど痛々しい青春映画はめったにないように思われます。繊細で傷つきやすく、などというありきたりの表現も、主役のファーリー・グレンジャーとキャシー・オドンネルのよわよわしくあやうい青春カップルを見れば、文句なしに納得できるでしょう。もう見ていられないくらい、はかなく美しい。

「俺たちに明日はない」(アーサー・ペン監督、1967)と同じボニーとクライドの実話を映画化したギャング映画ですが、「拳銃魔」(ジョゼフ・H・ルイス監督、1949)のように女(ペギー・カミンズ)のほうが男(ジョン・ドール)をひっぱっていくわけでなく、その前に映画化された「暗黒街の弾痕」(フリッツ・ラング監督、1937)のカップル(ヘンリー・フォンダとシルヴィア・シドニー)よりも、その後にリメイクされた『ボウイ&キーチ』(ロバート・アルトマン監督、1974)のカップル(キース・キャラダインとシェリー・デュヴァル)よりも、そしてもちろん『俺たちに明日はない』のカップル(ウォーレン・ビーティとフェイ・ダナウェイ)よりも、ずっと一途で感動的で、みじかくも美しく燃えた青春の花火のような一瞬を描いた佳作──珠玉の小品とも言いたいくらいです。

RKOという、そのころはB級の、マイナーのハリウッド映画の撮影所で、低予算による早撮りの映画づくりのため、技術的なミスが目立つ「できそこないの作品」であり、「それゆえに演出の才能がきらめく」とフランソワ・トリュフォーやジャン=リュック・ゴダールが心をこめて絶讃した若々しく新鮮な魅力もたっぷり味わえます。「あの犬はどうなったのだろう」「あの宝石店の店主はどうなったのだろう」などということなどにおかまいなく、映画は息せききったスピーディーなリズムで若いふたりの恋の逃走を追いかけます。そして、そのあまりにもあっけなく、せつない末路も。
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 新作映画の公開に先立ち、映画会社は宣伝のため、「試写室」と呼ばれる映写施設で上映会を行なう。
 これは「試写室」に出入りすることを許された、映画を見るプロたちが推薦する最新作をランキング形式で発表する企画。 すなわち、真の必見作がここにある!

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